千聖

- 2024.10.19

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── KOJIとの出会い

実はKOJI君と初めて出会ったのはそんなに早くはない、むしろ遅かったですね。

俺が”Crazy Monsters”という色々なバンドを集めてイベントをやっていて、2013年の”Crazy Monsters”の春のツアーのファイナルに、世代が一緒だったALvinoに、「良かったら出てみない?」と声をかけたら、すぐ出てくれる事になって。そこで初めてKOJI君と話したんですけど、このイベントがなかったら会わなかったかもしれないですね。

 

── 交流の始まり

ALvinoはそれからイベント(Crazy Monsters)の常連になっていき、さらに俺たちと関係が深くなっていきましたね。

プライベートだとホワイトスネイクが来日した時は、KOJI君に誘われて2人でパシフィコ横浜(2015年)に観に行ったっけ。ライブ後は中華街で食事をして、めちゃくちゃ盛り上がったりしてね(笑)。2人きりでどこかに行ったのは、その時が初めてだったと思います。

ALvinoのメンバーはすごくフレンドリーだったから、彼らのレコーディングにスタジオに遊びに行ったりして楽しかった。その後、イベントだけでなくALvinoとCrack6で2マンもやりましたね。

俺が高円寺で実兄とホルモン焼きを始めた(2016年)オープンの日、ALvinoはちょうどレコーディング中だったんだけど、KOJI君はPENICILLINのプロデューサーでCrack6のギタリストの重盛さんと2人で来てくれましたね。彼、大阪の人だからホルモン大好きだったみたいで、それ以後もよーく来てくれました。

あとは…KOJI君といえば、経営者という側面も強かったので、ビジネス的な話もよくしてましたね。お互い同じ立場というか、ギタリストであり、責任がある立場で、経営的な事も考えて、セルフプロデュースもしなければいけない…。経営者とアーティストの狭間というところを彼も凄く意識していたと思うんですよね。彼の方が2歳下ですけど、俺より全然しっかりしてた(笑)。90年代のヴィジュアル系ムーブメントの流れを知ってるし、2000年以降はバンドがさらに荒波に揉まれているので、その辺の苦労もお互い知っていますしね。2人とも80年代にROCKの洗礼を受けてるから、音楽のルーツも似ていて…そうそう!彼のLINEのアイコンがGUNS N’ ROSESだったな。心の中で「やるねぇ」っていつも思ってた(笑)本当、俺たちが一緒の時代を駆け抜けていたのがよく分かりますよね。お互いの表現するギタースタイルは違うけど、好きなものや、根本の考え方は似ているな、というのを凄く感じました。

 

── 2人とも事務所で色々あって、大変な思いをした。

結局、どこの事務所に所属したから幸せになれるというのはなくて、そこからKOJI君は自立を強く求めたんだろうなと思います。そんな時に俺たちは出会った。ただでさえアーティスト同士だと、激しいエゴがぶつかる時もあり大変なのに、さらに経営者となると嫌な駆け引きをする人にも会ってると思う。でも、KOJI君の場合はそうじゃなかった。音楽に対する愛がある上でのミュージック・ビジネスなので、非常に話がしやすかったですね。今思うと…彼はKOJIというギタリストを追求する研究者みたいな所があるんですよね。エンジニアリングとか、コンピュータを使っての音楽制作に対する愛も凄くあるけど、それプラス、ギターに対する愛も凄くあって。俺とは違って音楽に対しても非常にストイックな精神を持ってる人だったな、と思います。

 

── ギタープレイについて。

俺はどちらかというと、ドカンとパワーで押すタイプのギタリストだと自分では思っているんだけど、KOJI君は物凄く繊細な…細かいというか緻密というか…。ピッキング、フィンガリング含めいろいろ研究しているものが組み合わさった結果なんだと思います。

あと、彼とのエピソードで1番ビックリしたのが、”Crazy Monsters”のハロウィンイベントのアンコールで、恒例の出演者全員でのセッションがあるんですけどね。それで参加メンバー達に俺のソロの「shadow」という曲を事前に渡していたんだけど、何故かKOJI君にはそれが伝わってなかったという(笑)。普通だったら全然知らない曲だし、「俺は参加しない」となる可能性もあるじゃないですか。

でも、笑いながら「ちょっと聴かせてくれる?」と2回ぐらい聴いて、すぐ構成も覚えたみたいで、間違えもせず本番のセッションを終えたという。自分で、「曲を覚えるのは早い方なんだよね」と言っていましたが、「いや、早すぎるよ!」とみんなでツッコミを入れたぐらい(笑)。高見沢俊彦さんのサポートギターもやっていたし、いろいろな経験をしているからか、ただギターが上手いギタリストではなく、セッション・ギタリストにもなれるタイプで、個性もあって凄く器用な人でしたよね。

 

── ALvinoでは機材をいかに少なく、しかも良い音を出すかを考えていた。

ウーン、実にKOJI君らしい!(笑)経営者ですよね。余計なものはいらないという考え方は俺と似ていますね。凄くシンプルな考え方を持っていて、会話にもそれが凄く出るんですよ。非常にストレート(率直)で面白いというか、彼は上下関係とか関係なく言うタイプで、アーティストや周りのスタッフに対して凄く正直な人だと思う。しなやかで、かつ凄く強いというか…。

バンドバブルだった頃は、みんな気が大きくなってめちゃくちゃな事をしたりしがちだったけど、KOJI君はそういう事が全然なく冷静だって聞いた事がある。ライブ後、すぐに家に帰っちゃうとか(笑)。みんなやってるから俺もする、みたいなのがない。自分のスタイルを崩さないという、その確固たる意志は、逆に本当のアーティストなのかもしれない。

 

── 2017年12月11日に渋谷duo MUSIC EXCHANGEで行われたKOJIと HIROのジョイントライブにゲストで出演した時のエピソード。

KOJI君とHIRO君が2人のイベントをやった時にゲスト出演できたのは、今考えると貴重な体験でしたよね。音出しあってみたらわかったけど、2人ともタイプが違う。ギターの音量も違う(笑)。それでも、2人でその時代に作り上げたスタイルを、お互いに影響し合ってるんだなというのは、セッションした時に分かった。この2人が交わるとこういう事になるんだな、この2人はずっと一緒にやってきたんだな、というコンビネーションが伝わるんですよね。やっぱり同じバンドやってた人たちは同じ匂いなんです。あのイベントは本当貴重な体験だったなと。

 

── 2018年8月25日に新宿ReNYで”千聖/Crack6 ワンマンTOUR 2018 ジキルとMAD RIDER”究〜千聖> Crack6” にKOJIが出演。

2018年にCrack6ではなく、千聖ソロで徳間ジャパンから「ジキルの空」という曲をシングルを発売したんですけど、その時ミュージック・ビデオやアーティスト写真でKOJI君のグレッチのホワイトファルコンを借りて使ってるんですよね。それで、「ジキルの空」のツアーのファイナルの新宿ReNYでKOJI君に出演してもらったんだけど…これがCrazy Monsters以外では一緒にプレイした最後かもしれないです。

 

── KOJIが病気だと知った時。

SNSで公表するちょっと前に病気の事を知ったんですけど、癌は重い病気だし、恐る恐る本人に、「どう?」とLINEしたら、LINEの文章がいつものKOJIと何も変わらないんですよ。弱音を吐く訳でもなく全然普通に、もうちょっとしたら退院できるから会おうよ、みたいなノリで。ところが、その後発表される内容がどんどん違ってきて…。発表される度にLINEはしていたんです。「大丈夫?」みたいな。「何かあったら連絡くれ」とはずっと言っていて、「声かけてくれてありがとう」とか、コロナが流行ってたから「大変な時代だけど、助けあって行こうね」という話をしてて…

それから、2020年10月9日に退院した時にも「退院おめでとう!大変だと思うので返信しなくて良いですよ」と送ったら、「嬉しくて返信しちゃいました」と返ってきました。定期的にLINEはしていたんだけど、「体調が戻ったら一緒にご飯を食べよう」とか、そんな普段友達同士がするような会話でしたね。

 

── 最後に会ったのは?

ALICE IN MENSWEARになる前、ALvinoの最後の頃かな。さっき話した高円寺の店でやった忘年会かなぁ、ちょっと記憶が曖昧。

その時くらいから、俺も自分の事務所を新体制に変えたりとかで、忙しくて会えなかったんですよね。そうしてるうちにコロナが始まって、彼も体調悪くなっちゃったのでさらに会えなくなって…。

(LINEを見ながら)2021年4月にも、「落ち着いたら会いたい」とLINEが来ています。「抗がん剤の治療を続けている」とか、凄く長い文章で。

2022年の2月22日に、病状の報告をオフィシャルで発表してたじゃないですか。慌ててLINEしたんです。当然、返信しなくて良いと伝えたんですけど、返事くれて…嬉しかったですね。

それから、2022年3月に、プロデューサーの重盛さんと出掛けた先で撮った、重盛さんが小さく写ってる森の写真を送ったんです。ちょっと春を感じてもらいたくて。そしたら、「寒いから痛みを凄く感じるので、癒された」とLINEが返ってきたので、「よ〜く画像を見ると、重さんが小さく映ってるよ」と書いたら、「ホンマや!」と返事が送られて来てね…これがKOJI君からの最後のLINEでした。その後、4月13日に「誕生日おめでとうございます。ちょっと遅れちゃってごめん」って送ったんですけど、既読は…付いていないです。

 

── 2023年7月17日に東京・LINE CUBE SHIBUYAで行われたPENICILLINの”30th anniversary tour real final 渋谷公会堂”で、KOJIのギターを使ってプレイ。

大きいステージが似合うアーティストは意外と数少ないと思うけど、その中でも彼は似合う男の1人でしたね。大きいステージに彼が立ってる姿をイメージして欲しいな、と思って弾いたんですけど、果たしてKOJI君を応援してる人たちの前で、俺が彼のギターを持って弾いて良いのかどうか?凄く悩んだ。でも、KOJI君だったら「弾いてよ!」と絶対に言いそうだなと思った。コロナもあって2020年以後は彼には直接会えなかったので、お別れ会の時にギターには挨拶したんだけど、ギターって弾いてナンボだと思うんですよね。使わないと死んでいくというか、駄目になっていく、朽ち果てていくと思う。あれだけギターを弾いた人が触らなくなったギター達はどうするんだろう?という思いがあったので、戦闘体制になっているギター達をそのままずっと眠らせておくのも嫌だなと、勝手に思っていましたね。

それに…自分にとって1番大きかったのが、恐らくKOJI君は「もっとステージに立ちたがっていたはず」と思った事ですね。それで、彼のギターをKOJI君だと思って弾きました。

「一緒に渋公に立とうよ、俺たちはずっと一緒だ」ってね。

Crack6の曲「Crazy Monsters」のMVで弾いてもらった、あのミラーギターを弾かせてもらったんだけど、あのギターは見た目より全然凄く重たい(笑)。なかなかの暴れん坊で自分に馴染むまで、あのギターを借りてからずっと弾いていましたよ。スイッチが沢山付いていて、弾いているうちに、こういう事ができるんだ、ああ、こういう事もできるんだと、だんだんKOJI君と会話しているみたいな感じで。複雑だけど面白いなとか、彼の性格と似ているなとか…。ネックが太くて、色々な機能が搭載されている割にはガッツのある音で、KOJI君の人柄そのものが出ていましたね。

PENCILLINの30周年のコンサートはKOJI君と一緒に終える事ができたな、と思っています。

 

 

── KOJIへの思い。

俺は坂本龍馬が好きで、坂本龍馬が言った言葉で「人は2度死ぬ」と…。1回目は本当の死で、2回目は「忘れ去られる事」だと言っていたのを思い出して、KOJI君が永遠に生き続ける為の1番の方法は忘れてしまわない事、KOJI君というギタリスト、人間がいたんだという事を忘れない事ですよね。それを受け継いで、彼の息子さんがギターを弾いているというのは本当に素晴らしい事だし、それがたとえKOJI君と違うスタイルであっても、俺はいいと思う。

KOJI君には永遠に生き続けて欲しいとなと思います。

俺とKOJI君はスタイルが全然違ったので、ぶつかる事もなかったけど、同じような苦労もしてきているし、俺は彼より全然緩いんだけど(笑)、彼の厳しさも分かるし、彼も多分、俺の緩さを分かっていたんだろうな、と思います。

側から見ると、俺の方が攻撃的でKOJI君の方が柔らかいイメージがあるかもしれないけど、逆なんですよ。彼は突っ込んで行くけど、俺は懐柔するタイプなので、ちょっと面白かったな。ああいう人は多分二度と現れないだろうな、と思うし、忘れないですよ。

これからも彼のギターを忘れず、みんなに彼の作品を聴き続けてほしいなと思います。

 

 

千聖氏 KOJIミラーギター使用LIVE
『PENICILLIN 30th anniversary tour final 渋谷公会堂』DVD受注受付中!!

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<受注期間>
2024年10月16日(水)18:00~2024年11月4日(月)23:59まで

<価格>
12,100円(税込)

<内容>
2023年7月17日にLINE CUBE SHIBUYAにて開催された30th anniversaryツアーファイナルのライブDVDの販売が決定!当日演奏した31曲全てを収録した映像のDVD化。DVD2枚組のスリーブケース付きの豪華版。
DVDにはPENICILLINメンバー3人がライブ映像を見ながらの副音声も収録。

<DVD収録曲>
01. パライゾ / 02. イナズマ / 03. Quarter Doll / 04. CRASH / 05. 花園キネマ / 06. 冷たい風 / 07. WILL / 08. LOVE DRAGOON / 09. JUMP#1 / 10. 99番目の夜 / 11. SOL / 12. 白髏の舞 / 13. ハカナ / 14. one star / 15. 飛翔遊戯 / 16. make love / 17. Japanese Industrial Students / 18. 腐海の砂 / 19. Lucifer 〜光をもたらす者〜 / 20. WARP / 21. Rosetta / 22. Desire / 23. NEW FUTURE / 24. Time Machine /25. 太陽の国 / 26. Realxxx / 27. 天使よ目覚めて / 28. ロマンス / 29. Chaos / 30. 螺旋階段 / 31. God of grind

※「25. 太陽の国」よりKOJIミラーギター登場!